第23話 嬉しさと心苦しさと 3章 (1/2)

神宮寺の家を訪れた数日後、神宮寺本人から事務所宛てに手紙が届いた。内容は、収録での自分の大人気ない態度に対する謝罪と、三人のこれからの活躍に対して期待を寄せているというものだった。

shutterstock_506284951
(c) Shutterstock.com

胸のつかえが取れると同時に、大きな後ろ盾を得たような心強い気持ちになった。

すでに、ハッピーメメントの次回シングル曲の計画が進んでいた。プロデューサーは、前回同様、服部翔太だ。晴れて事務所入りを果たし、それを祝して仁美がパソコンを贈った。翔太は打ち込みなどの技術をマスターし、作曲家らしくなってきた。

曲が完成したという連絡が、仁美に入った。ただ、まだ歌入れをしていない段階だと言う。どうしても、仁美の声で歌入れをしたいとの要望があったため、仁美としても翔太の期待に添えて、グループのためになるのというのであれば、断る理由はなかった。

再び、翔太のマンションを訪れた。季節が進み、建物の構造上からも、部屋の中でもかなり寒い。温かい紅茶で喉を潤しつつ、翔太に歌詞の意味のレクチャーを受け、歌入れを行った。今回も、ツーテイクで十分なものが録れた。

「さすが仁美さん! うまいなぁ。プロになったほうがいいんじゃないですか?」

「ちょっと、からかわないでよ」

「本当ですよ! まったくお世辞とかじゃないのになぁ」

「分かった。じゃあ素直に受け止めておくわ」仁美は時計を見た。

「少し早く終わったし、飲みのでも行く? この辺でいいお店とかあれば」

「いいですね! 任せてください!」

最寄りの駅のほうまで歩き、細い路地に入ると、小さなおでん屋があった。

「ここ、めちゃめちゃ美味いんですよ」

翔太のあとについて暖簾をくぐる。おでん屋とはいえ、土地柄なのか客層は若い人たちが多かった。ふたつあるテーブル席は埋まっていたので、カウンター席に並んで座った。

「えっと…大根と玉子と、ちくわとさつま揚げ、をふたつずつ。あ、あとビールお願いします」

翔太が慣れた様子で注文する。ビールで乾杯を済ませると、器に盛られたおでんに手をつけた。

箸を入れるとジュワッと煮汁が溢れ、湯気と共に独特の香りが立った。口に含むと噛むまでもなく、とろけるように消えた。ビールの次は日本酒と、酒が進む。二人でこれだけ飲んだのは初めてだった。

 

  
 
 

この連載: 誰もが憧れるスターを夢見て

この記事のライター

小川沙耶の最新記事

関連記事で、さらに深める。

 

  

最新記事

女性のための電子コミックサイト「エルラブ」
無料で読める漫画が500作品以上!
期間限定おすすめコミック♪
  • 禁断放課後愛撫
  • ゆううつなPeach
  • いじわるしないで
  • あまくておいしい
電子コミックサイト エルラブ

 

人気総合ランキング

 
 
 
 

  

  

Hot Word! 今、人気のキーワード

カテゴリーから探す

アナタの今晩の気分は?

アナタの恋愛状況は?

アナタの恋愛ターゲットは?

今、読みたいジャンルは?

ライターから探す

ライターに相談!

幅広いジャンルのスペシャリストのライターに今の悩みを相談してみよ!!